障害のあるお子さんが障害福祉サービスを受けるための第一歩 障害支援区分の申請手続きを分かりやすく解説
はじめに
お子さんに必要な支援を考えたとき、障害福祉サービスの利用は有力な選択肢の一つとなります。しかし、「どのサービスを選べば良いの?」「手続きが複雑そうで、何から始めたら良いか分からない」と、情報過多の中で混乱されている親御さんもいらっしゃるかもしれません。日々の生活やお子さんのケアに追われ、情報収集に十分な時間をかけられない中で、手続きについて調べるのは大きな負担であるとお察しいたします。
障害福祉サービスを利用するためには、「障害支援区分」の認定を受けることが、多くの場合、最初の一歩となります。この区分は、お子さんの心身の状態や生活状況に基づき、どの程度の支援が必要かを判断するためのものです。
この記事では、この障害支援区分について、どのようなもので、どのように申請し、どのように認定されるのか、その流れを分かりやすく解説いたします。手続きの全体像を把握し、お子さんにとってより良い支援につながる情報としてご活用いただければ幸いです。
障害支援区分とは? 制度の概要
障害支援区分とは、障害のある方(18歳未満の場合は障害児)について、心身の状態や日常生活での支援の必要度合いを示す6段階の区分(区分1〜6)と、非該当を定めたものです。障害支援区分が高いほど、より手厚いサービスが必要であると判断されます。
この区分は、障害福祉サービスを利用する際に、サービスの量(利用時間や回数)などを決めるための重要な基準となります。例えば、通所系のサービスや短期入所サービスなど、多くの障害福祉サービスは、認定された障害支援区分に応じて利用できる上限が設定されています。
障害支援区分は、身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の等級とは異なる、独自の基準に基づいています。手帳をお持ちでなくても、サービスの利用を希望される場合は申請できます。
対象者
障害支援区分の申請対象となるのは、原則として障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの利用を希望する方です。お子さんの場合は、主に障害児通所支援(児童発達支援、放課後等デイサービスなど)以外の障害福祉サービス(短期入所、居宅介護など)を利用する際に必要となります。ただし、市区町村によっては、障害児通所支援の支給決定の参考とされる場合もありますので、お住まいの市区町村の担当窓口にご確認ください。
申請から認定までの全体の流れ
障害支援区分の申請から認定までは、一般的に以下の流れで進みます。
- 市区町村の窓口に申請
- 認定調査(市区町村の職員や委託された調査員が訪問調査を行います)
- 医師意見書の作成依頼(主治医に作成を依頼します)
- 一次判定(コンピューターによる判定)
- 二次判定(介護給付費等認定審査会による審査)
- 認定結果の通知
それぞれのステップについて、具体的に見ていきましょう。
申請手続きの詳細
障害支援区分の申請は、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で行います。
どこに申請するか
市区町村役場などの障害福祉担当課が窓口となります。事前に電話で問い合わせて、担当窓口や必要な書類について確認しておくとスムーズです。
必要な書類
申請には、主に以下の書類が必要となります。
- 障害福祉サービス等申請書
- 障害者の心身の状況に関する意見書(主治医に作成を依頼します)
- マイナンバー確認書類、本人確認書類など
自治体によって必要な書類が異なる場合がありますので、申請窓口で必ずご確認ください。
申請方法
窓口に直接出向いて申請する方法が一般的です。郵送での申請を受け付けている場合もあります。
認定調査について
申請を受け付けた後、市区町村は障害支援区分を判定するための認定調査を行います。
どのような調査が行われるか
調査員がお子さんのご自宅などを訪問し、お子さんの日頃の生活状況や心身の状態について聞き取りを行います。調査は、全国共通の「認定調査票」に基づいて行われ、以下の2つのパートから構成されます。
- 基本調査項目: 移動、排泄、食事、入浴、家事、コミュニケーションなど、日常生活における動作や認知機能など、約100項目について状況を確認します。
- 特記事項: 基本調査項目だけでは捉えきれない、お子さんの障害特性や日頃の状況について、調査員が具体的に書き記します。
調査のポイント
調査では、お子さんの「日頃の状況」や「普段の生活でどのような支援が必要か」を具体的に伝えることが非常に重要です。例えば、「自分で着替えができる」という場合でも、「声かけや見守りが必要」「服を選ぶのに時間がかかる」など、具体的な状況を伝えると、より実態に合った評価につながりやすくなります。調査員に日頃の様子を正確に伝えるために、事前にメモなどにまとめておくと良いでしょう。
誰が調査に来るか
市区町村の職員、または市区町村から委託を受けた相談支援専門員などが調査を行います。
医師意見書について
申請時に提出する医師意見書は、障害支援区分を判定する上で、認定調査票と並んで重要な資料となります。
主治医に記載を依頼
お子さんの心身の状態を最も良く把握している主治医(かかりつけ医)に作成を依頼します。診断名や病状だけでなく、日常生活における医学的な管理や注意点、心身の状態に関する医学的な評価などが記載されます。
どのような内容が書かれるか
診断名、現在の病状、症状の経過、服薬状況、合併症の有無、そして日常生活や社会生活における活動能力や制限の程度などが記載されます。この意見書は、一次判定、二次判定の両方で参考にされます。
審査会について
認定調査の結果と医師意見書に基づいて、障害支援区分が判定されます。判定は、「一次判定」と「二次判定」の二段階で行われます。
どのように審査が行われるか
- 一次判定: 認定調査の基本調査項目の結果と医師意見書の一部を基に、コンピューターが全国共通の基準を用いて客観的に判定します。ここで一次的な障害支援区分が算出されます。
- 二次判定: 一次判定の結果、認定調査の特記事項、医師意見書全体、そして市区町村が独自に収集した情報などを踏まえ、「介護給付費等認定審査会」が総合的に審査を行い、最終的な障害支援区分(区分1〜6または非該当)を判定します。審査会は、医療、福祉、学識経験者などの専門家で構成されます。
認定結果の通知
二次判定で決定された障害支援区分は、市区町村から申請者(親御さん)に通知されます。
認定された区分と有効期間
通知される内容には、認定された障害支援区分(非該当、区分1〜6)と、その有効期間が記載されています。有効期間は原則として3年間ですが、お子さんの状況によっては短くなる場合もあります。有効期間が切れる前に更新手続きが必要となります。
認定結果に納得できない場合
もし認定された障害支援区分や非該当という結果に納得ができない場合は、不服申立てを行うことができます。不服申立ては、都道府県に設置されている「障害者介護給付費等不服審査会」に対して行います。具体的な手続きについては、市区町村の担当窓口や相談支援事業所に相談してみることをお勧めします。
注意点
- 申請から認定までの期間: 申請から認定結果の通知までは、自治体によって異なりますが、一般的に1ヶ月〜2ヶ月程度かかることがあります。余裕を持って申請することをお勧めします。
- 日頃の状況を正確に伝える: 認定調査では、お子さんの「できること」だけでなく、「困難なこと」「どのような支援があればできるか」を具体的に伝えることが重要です。日によって状況が異なる場合は、最も困難な状況や、平均的な状況について伝えるようにしましょう。
- 有効期間内の更新: 認定には有効期間があります。引き続きサービス利用を希望する場合は、有効期間が切れる前に更新の手続きが必要ですので、通知された有効期間を確認し、早めに準備を始めましょう。
関連する他の制度や情報源
障害支援区分の認定は、障害福祉サービスの利用を開始するための第一歩です。認定後、実際にサービスを利用するためには、「サービス等利用計画」の作成が必要となります。この計画作成は、お住まいの地域にある「指定特定相談支援事業所」に依頼することができます。相談支援専門員が、お子さんの希望や状況を聞き取り、利用できるサービスを検討し、計画を作成してくれます。
相談窓口や専門機関の情報
手続きを進める上でご不明な点や不安なことがあれば、一人で抱え込まずに以下の窓口に相談してみてください。
- お住まいの市区町村 障害福祉担当窓口: 申請手続きに関する詳細や、制度全般について相談できます。
- 指定特定相談支援事業所: 障害支援区分の申請に関する相談支援や、認定後のサービス等利用計画の作成を依頼できます。事業所一覧はお住まいの市区町村のウェブサイトなどで確認できます。
まとめ
障害のあるお子さんの障害支援区分申請は、多くの障害福祉サービスを利用するための大切な手続きです。情報収集や手続きには時間も労力もかかり、ご負担を感じることもあるかと存じます。
この記事が、申請から認定までの全体像を把握し、手続きを進める上でのお役に立てれば幸いです。もし分からないことや不安なことが出てきたら、お住まいの市区町村の窓口や相談支援事業所など、専門の相談窓口に遠慮なくご相談ください。お子さんに必要な支援を、適切に利用できるよう願っております。