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障害のあるお子さんの障害福祉サービス 申請後の流れと審査、認定調査の準備ガイド

Tags: 障害福祉サービス, 申請手続き, 審査, 認定調査, サービス利用計画, 相談支援

はじめに

障害のあるお子さんの成長を支える上で、様々な障害福祉サービスの活用は大きな助けとなります。しかし、サービスを受けるための申請手続きは複雑に感じられ、申請後、実際にサービスが利用できるようになるまでの流れが分からず、不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。

「申請はしたけれど、これからどうなるのだろう?」 「どんな審査があるの?」「調査員が来ると聞くけれど、何を準備すればいいのだろう?」

この記事では、障害福祉サービスの申請を終えた親御さんが、これからどのような流れでサービス利用に至るのか、特に審査のプロセスや認定調査(障害支援区分認定が必要な場合)について、具体的にどのように準備を進めれば良いのかを分かりやすく解説します。

この情報が、申請後の見通しを持ち、安心して次のステップに進むための一助となれば幸いです。

障害福祉サービス申請後の全体的な流れ

障害福祉サービスを利用するためには、お住まいの市区町村の窓口(福祉課、障害福祉課など)への申請が必要です。申請後、いくつかのプロセスを経て、最終的にサービス利用のための「障害福祉サービス受給者証」が交付されます。大まかな流れは以下の通りです。

  1. 申請:市区町村の窓口に、サービス利用の申請書や必要な書類を提出します。
  2. 書類審査・面談:提出された書類に基づき、サービスの必要性などが確認されます。場合によっては、窓口担当者との面談が行われることもあります。
  3. 障害支援区分認定(区分認定が必要なサービスの場合):心身の状態に関する「認定調査」や、医師の「意見書」に基づいて、どの程度の支援が必要かの区分が判定されます。
  4. サービス等利用計画案の作成:申請者の希望や心身の状態に基づき、利用したいサービスの種類や量などを盛り込んだ計画案を作成します。(相談支援事業所に依頼するのが一般的です)
  5. 支給決定:市区町村が、提出された書類、区分認定(必要な場合)、サービス等利用計画案などを踏まえ、利用できるサービスの種類や量を決定します。
  6. 受給者証の交付:支給決定後、サービスを利用するための「障害福祉サービス受給者証」が交付されます。
  7. サービス担当者会議・契約:サービス事業者との話し合い(サービス担当者会議)を経て、正式な「サービス等利用計画」を作成し、サービス事業者と契約を結びます。
  8. サービス利用開始:サービス等利用計画に基づき、サービスの利用が開始されます。

この流れはサービスの種類(障害児通所支援、障害者総合支援法に基づくサービスなど)やお住まいの地域によって若干異なる場合がありますが、大きな骨子は共通しています。

申請後、まず何が行われるか?

申請書を提出すると、市区町村の担当部署で書類の確認が始まります。提出した書類に不足がないか、申請内容に不明な点はないかなどが確認されます。

障害者総合支援法に基づく居宅介護や短期入所などのサービスで、障害支援区分認定が必要な場合、市区町村から認定調査の日程調整の連絡が入ります。また、同時に医師に診断書ではなく「意見書」の作成依頼が行われます。(診断書が必要なサービスもあります)

一方、障害児通所支援(児童発達支援、放課後等デイサービスなど)は、原則として障害支援区分認定は不要ですが、サービスの必要性を判断するための面談が行われることや、診断書や療育手帳、特別児童扶養手当証書などの提示を求められることがあります。

審査の鍵となる「障害支援区分認定」(区分認定が必要なサービスの場合)

障害者総合支援法に基づく多くのサービスを利用するためには、その方にどの程度の支援が必要かを示す「障害支援区分」の認定を受ける必要があります。区分は非該当から区分6までの7段階があり、この区分によって利用できるサービスの種類や量が大きく影響されます。

区分認定は、主に以下の二つを基に行われます。

認定調査とは?目的と内容

認定調査は、障害のあるご本人が日常生活でどのような点に困っていて、どの程度の支援が必要なのかを客観的に把握するために行われます。調査員は、国の基準に基づいた調査項目に沿って聞き取りを行います。

調査項目は、主に以下の分野に分かれています。

これらの項目について、「できる」「見守りがあればできる」「支援があればできる」「できない」といった選択肢から現在の状況に近いものを選んだり、具体的なエピソードを記録したりします。

認定調査の準備:事前に整理しておくべきこと、伝えるべきポイント

認定調査は、お子さんの普段の生活での困りごとや、ご家族が日常的に行っている支援の内容を調査員に正確に伝えるための重要な機会です。限られた時間の中で、普段の様子を十分に伝えるためには、事前の準備が非常に有効です。

  1. 日常生活での困りごとや介助・支援内容を具体的にメモにまとめる
    • 調査項目(身体、認知、精神行動、社会生活)を参考に、日常生活の中で「どんな場面で」「どんなことに困っているか」「その時、家族はどんな支援をしているか」を具体的に書き出しておきましょう。
      • 例:「食事中に立ち歩いてしまうため、常に座っているように声かけが必要」「着替えるときに前後が分からず、服を広げて着せる介助が必要」「急な予定変更に対応できずパニックになりやすい」「見慣れない場所では、常に手を繋いでいないと急に走り出してしまう」など。
    • 特に、調査当日は緊張したり、うっかり伝え忘れたりすることがあります。事前にメモを作成し、調査員に確認してもらいながら進めるのも良いでしょう。
  2. 「できること」だけでなく、「できないこと」「支援があればできること」に焦点を当てる
    • 調査では、介助や見守りが必要な状況について詳しく聞かれます。「これは当たり前だから」と思っている日常的な支援ほど、伝え忘れてしまいがちです。例えば、「お風呂は一人で入れるが、シャンプーや石鹸は親が準備しないと使えない」「服は自分で選べるが、季節に合った服を選ぶには声かけが必要」など、一見自立しているように見えても、部分的な支援が必要な場合はそのことを具体的に伝えましょう。
  3. 普段の様子が分かる写真や動画を用意する
    • 言葉で伝えるのが難しい様子や、特定の場面での困りごとを視覚的に伝えることは非常に有効です。調査当日の限られた時間や、お子さんの当日のコンディションによっては、普段の様子を調査員に見てもらうのが難しいことがあります。食事や入浴、外出時など、日常的な困りごとや支援の様子を撮影した写真や動画を、調査員に見てもらえるように準備しておくと良いでしょう。
  4. 家族以外の人からの情報提供も検討する
    • 普段からお子さんと関わっている学校の先生や、利用している事業所の職員、医師などから、お子さんの様子に関する情報提供を依頼できる場合があります。特に、家での様子とは異なる一面や、専門的な視点からの情報が認定に役立つことがあります。市区町村の担当窓口や相談支援専門員に相談してみましょう。
  5. 調査員に伝えたいことをまとめておく
    • 調査項目の聞き取りとは別に、日常生活全体を通して特に伝えたいことや、今後の生活で重要だと考えていること(特記事項)があれば、事前にまとめておきましょう。例えば、「発語はないが、指差しで要求を伝えることができる」「特定の音に過敏で、パニックを起こしやすい」「見通しがないと不安が強くなるため、事前に手順を伝える必要がある」など、調査項目だけでは十分に伝わらないお子さん固有の特性や困りごとを具体的に伝えることが重要です。

サービス等利用計画案の作成・提出

障害支援区分認定と並行して、または認定結果が出た後に、サービス等利用計画案を作成し、市区町村に提出する必要があります。この計画案は、これからどのようなサービスをどのくらい利用したいか、そのサービスを利用することでどのような目標を達成したいかを具体的に記したものです。

サービス等利用計画案は、相談支援事業所に依頼して作成してもらうのが一般的です。相談支援専門員がお子さんやご家族と面談し(これをアセスメントといいます)、希望や困りごと、生活状況などを丁寧に聞き取り、計画案を作成します。

計画案が作成されたら、内容をしっかり確認しましょう。希望するサービスの種類や量、サービス利用の目標などが正しく反映されているかを確認し、必要であれば修正をお願いします。この計画案は、後の支給決定の重要な資料となります。

支給決定について

市区町村は、提出された申請書類、障害支援区分認定の結果(必要な場合)、医師意見書、サービス等利用計画案などを総合的に審査し、最終的な支給決定を行います。決定されるのは、利用できるサービスの種類と、その「支給量」(月に利用できる日数や時間数など)です。

支給決定までの期間は、申請内容や市区町村の状況によって異なりますが、通常は申請から1ヶ月〜3ヶ月程度かかることが多いようです。特に、障害支援区分認定が必要な場合は、認定調査や審査会を経るため、比較的時間がかかる傾向にあります。

決定内容は「障害福祉サービス受給者証」に記載されます。この受給者証がお手元に届いたら、記載内容(サービスの種類、支給量、有効期間、利用者負担上限月額など)を確認しましょう。

もし決定内容に納得できない場合

支給決定されたサービスの種類や支給量が、希望や実際に必要な支援の量と合わないと感じることもあるかもしれません。その場合は、まずは市区町村の担当窓口に相談し、決定に至った理由について説明を求めることができます。

それでも納得がいかない場合は、「不服申し立て」を行うことができます。不服申し立ては、都道府県に設置されている審査会に対して行いますが、一定期間内に手続きを行う必要があります。また、決定内容によっては、再度申請を行うことで、より適切な支給量が認められる可能性もあります。具体的な対応については、市区町村の担当窓口や相談支援事業所にご相談ください。(※詳細な手続きについては、別の記事でも解説しています。)

相談窓口

申請後の流れや審査、認定調査について分からないことや不安なことがある場合は、一人で悩まずに相談することが大切です。

これらの相談窓口を上手に活用しながら、手続きを進めていきましょう。

まとめ

障害のあるお子さんの障害福祉サービス申請後のプロセスは、書類審査、障害支援区分認定(必要な場合)、サービス等利用計画案の作成、支給決定といった段階を経て進みます。特に、障害支援区分認定のための認定調査は、お子さんの普段の様子や必要な支援を正確に伝えるための重要な機会です。

この記事でご紹介したように、事前に日常生活での困りごとや必要な支援を具体的に整理し、調査員に分かりやすく伝える準備をしておくことが、適切なサービス利用に繋がる可能性を高めます。

手続きの途中で不安を感じたり、疑問が生じたりした場合は、市区町村の担当窓口や相談支援事業所に遠慮なく相談しましょう。専門家のサポートを得ながら、お子さんにとって本当に必要な支援を受けられるよう、一緒に手続きを進めていくことができます。

この記事が、親御さんの申請後の不安を少しでも軽減し、お子さんのより良い未来のためのサービス利用に繋がることを願っています。