障害のあるお子さんの「うちの地域」で使える支援 市町村の地域生活支援事業を見つけるには
はじめに
障害のあるお子さんを育てていらっしゃる親御さんにとって、利用できる支援制度やサービスは多岐にわたり、全体像を把握したり、ご自身の地域で何が使えるのかを見つけたりすることは、非常に時間と労力のかかることとお察しいたします。特に、お子さんの年齢や成長段階、障害の種類によって必要な支援も変化するため、「うちの子にはどんな支援があるのだろう」「どこに相談すれば良いのだろう」と悩まれることもあるかもしれません。
このページでは、国の基準で定められた障害福祉サービスとは少し異なり、皆さんがお住まいの市町村が中心となって提供する「地域生活支援事業」に焦点を当ててご説明いたします。地域生活支援事業は、その名の通り、障害のある方が地域で安心して暮らせるように、市町村が地域の特性に合わせて柔軟に実施する事業です。
この記事を通じて、地域生活支援事業の概要やどのような種類があるのかを知り、「自分の住む地域ではどのような支援が利用できるのか」を見つけるための一歩を踏み出すためのお手伝いができれば幸いです。
地域生活支援事業とは?
地域生活支援事業は、障害者総合支援法に基づき、市町村が実施する事業です。国の定めた障害福祉サービス(介護給付や訓練等給付など)は全国共通の基準がありますが、地域生活支援事業は市町村の判断により、地域の状況やニーズに合わせて内容や基準を定めているのが特徴です。
この事業の主な目的は、障害のある方が身近な地域で必要な支援を受けながら、自立した日常生活や社会生活を送れるようにすることです。個別のニーズに応じた多様なサービスが提供されています。
地域生活支援事業の種類(例)
地域生活支援事業には、市町村が実施することが義務付けられている「必須事業」と、市町村の判断で実施する「任意事業」があります。事業内容は市町村によって異なりますが、ここでは一般的な事業の一部をご紹介します。
【必須事業】
- 相談支援事業: 障害のある方やそのご家族からの相談に応じ、必要な情報提供や助言、関係機関との連絡調整を行います。専門の相談支援専門員が対応します。(※障害福祉サービス利用のための計画相談支援とは別の枠組みです)
- 移動支援事業: 単独での移動が困難な方に対し、外出のための支援(ガイドヘルプ)を行います。社会生活上必要不可欠な外出や余暇活動等の社会参加のための外出を支援し、行動範囲を広げることを目的とします。
- 短期入所(緊急時支援): ご家族の病気や冠婚葬祭などの緊急時に、一時的に施設に入所して日常生活全般の支援を受けることができます。(※国の障害福祉サービスである短期入所とは別に、緊急時などに限定して実施される場合があります。)
- 日中一時支援: 日中において介護する方がいない場合に、施設などで一時的に預かり、見守りや社会活動の機会を提供します。ご家族のレスパイト(休息)のためにも利用されます。
【任意事業】
- 日常生活用具給付等事業: 入浴補助用具、特殊寝台、訓練用タイヤなどの日常生活を便利にするための用具や、情報・意思疎通支援用具(点字ディスプレイなど)の購入・修理費用の一部を給付または貸与する事業です。
- 地域活動支援センター: 創作的活動や生産活動の機会を提供したり、社会との交流を促進したりするための事業所です。地域の障害のある方が気軽に集まり、交流できる場を提供します。
- 福祉ホーム: 障害のある方が低額な料金で利用できる居室等を提供し、日常生活上の相談・支援を行う住まいの場です。(グループホームが共同生活援助であるのに対し、福祉ホームは居室提供が中心です。)
- 訪問入浴サービス: 自宅での入浴が困難な方のために、浴槽などを積んだ入浴車で訪問し、入浴介護を行うサービスです。
- その他: 市町村によっては、手話奉仕員養成研修、要約筆記者養成研修、専門性の高い意思疎通支援を行う者の派遣事業、障害者に対する虐待の防止や権利擁護に関する事業などを実施しています。
上記はあくまで例であり、皆さんがお住まいの市町村で実施されている事業やその内容は異なる可能性があります。
「うちの地域」の地域生活支援事業を見つけるには?
地域生活支援事業の情報は、市町村によって提供方法が異なるため、少し探しにくいと感じられるかもしれません。以下の方法で情報を集めるのが一般的です。
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市町村の障害福祉担当窓口に相談する:
- 最も確実な方法です。お住まいの市町村の役所(役場)にある障害福祉課や社会福祉課など、障害者に関する窓口に直接問い合わせてみてください。
- 「地域生活支援事業について知りたい」「利用できるサービスについて教えてほしい」と伝えると、該当する事業や手続きについて案内してもらえます。
- お子さんの状況や困りごとを伝えると、どのようなサービスが合うか一緒に考えてくれることもあります。
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市町村の公式ウェブサイトを確認する:
- 多くの市町村では、公式ウェブサイトに障害福祉に関する情報を掲載しています。「[市町村名] 障害 地域生活支援事業」といったキーワードで検索してみると、事業一覧やパンフレットが見つかることがあります。
- ウェブサイトの情報は最新でない場合もあるため、詳細や不明な点は窓口に確認することをおすすめします。
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相談支援専門員に相談する:
- お子さんがすでに障害福祉サービスを利用している、または利用を検討しており、相談支援事業所を利用している場合は、担当の相談支援専門員に相談するのも良い方法です。
- 相談支援専門員は地域の社会資源に詳しいため、地域生活支援事業についても情報を持っていることが多いです。個別支援計画を作成する際に、これらのサービスも視野に入れてもらうことも可能です。
地域生活支援事業を利用するまでの一般的な流れ
地域生活支援事業の利用手続きも、事業の種類や市町村によって異なりますが、大まかな流れは以下のようになります。
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市町村窓口や相談支援事業所へ相談:
- まずはお住まいの市町村の障害福祉担当窓口か、地域の相談支援事業所に相談します。
- どのような支援が必要か、どのようなことで困っているかを伝えます。
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事業内容の説明と申請:
- 窓口で、利用できる可能性のある地域生活支援事業について説明を受けます。
- 利用したいサービスが見つかったら、申請が必要かどうか、必要な場合は手続きの方法や必要書類について確認します。事業によっては申請手続きが必要ないものもあります。
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調査・審査(必要な場合):
- 申請が必要な事業の場合、市町村による聞き取り調査(アセスメント)や、支給決定のための審査が行われることがあります。
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サービス等利用計画案の作成(必要な場合):
- 障害福祉サービスと併せて利用する場合や、相談支援専門員に相談している場合は、サービス等利用計画の中に地域生活支援事業の利用も位置づけることがあります。
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支給決定・通知:
- 審査の結果、サービスの利用が決定すると、市町村から通知書が送付されます。
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サービス提供事業者との契約・利用開始:
- 利用が決定した事業のサービスを提供している事業所を選び、契約を結びます。
- 契約後、サービスの利用が開始されます。
利用上の注意点
- 地域によって内容が異なる: これが地域生活支援事業の最も重要な点です。他の市町村で実施されている事業が、必ずしも皆さんの地域で利用できるとは限りません。必ずお住まいの市町村の情報をご確認ください。
- 利用の要件や手続きを確認する: 事業ごとに利用対象者、利用回数の上限、費用負担(自己負担が発生する場合がある)、申請に必要な書類などが細かく定められています。詳細は必ず事前に確認しましょう。
- 情報収集を根気強く: 地域によっては、ウェブサイトの情報が少なかったり、担当部署が分かりにくかったりすることもあります。諦めずに、まずは市町村の窓口に直接問い合わせてみることをお勧めします。
まとめ
地域生活支援事業は、障害のあるお子さんが身近な地域でより豊かに、安心して生活していくために、市町村が提供する大切な支援です。国のサービスだけではカバーしきれない多様なニーズに応えるための、地域に根差したサービスが提供されています。
情報が少し探しにくい側面もありますが、お住まいの市町村の障害福祉担当窓口や相談支援事業所が、情報を得るための重要な入り口となります。まずは一歩踏み出して相談してみることから始めてみてください。
この記事が、皆さんがお住まいの地域で利用できる支援を見つけ、お子さんのより良い地域生活に繋がる一助となれば幸いです。