障害のあるお子さんの障害福祉サービス 支給決定後の手続き 変更・更新ガイド
はじめに
障害のあるお子さんのために障害福祉サービスの利用を決意し、複雑な手続きを経てようやく「支給決定」を受けたとき、大きな安堵を感じられたことと思います。しかし、お子さんの成長や状況の変化、または制度の有効期間満了に伴い、サービスの内容を見直したり、更新の手続きが必要になったりすることがあります。
「一度決まったのに、また手続きが必要なの?」 「どうすればサービスの内容を変えられるの?」 「更新って、最初からやり直し?」
といった疑問や不安をお持ちの親御さんもいらっしゃるかもしれません。慣れない手続きに加え、日々のお世話や仕事に追われる中で、これらの情報を集めるのは容易ではないこととお察しいたします。
この記事では、障害福祉サービスの支給決定を受けた後に必要となる可能性のある手続き、特に「変更手続き」と「更新手続き」について、親御さんが知っておくべきこと、進め方のステップ、そしてスムーズに行うためのポイントを分かりやすく解説します。お子さんにとって必要な支援を継続していくために、ぜひご活用ください。
支給決定後に必要となる主な手続き
障害福祉サービスの支給決定は、一度行われたら永続するものではありません。お子さんの状況やニーズの変化、または支給決定の有効期間によって、手続きが必要になります。主なものは以下の通りです。
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変更手続き:
- 現在利用しているサービスの種類や支給量を変更したい場合。
- 引っ越しなどにより、利用する事業所や市町村が変わる場合。
- お子さんの障害の状態やニーズが大きく変化した場合。
- その他、サービス等利用計画に記載された内容に変更が生じる場合。
- 例:「週に○回の通所支援を増やしたい」「居宅介護の利用時間を変更したい」「違う種類のサービスを試したい」など。
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更新手続き:
- 支給決定には有効期間が定められています。この期間が満了する前に、サービスの利用を継続したい場合に必要な手続きです。
- 市町村から有効期間満了の通知が届くのが一般的です。
これらの手続きは、最初に行った申請と類似している部分もありますが、それぞれに特有の流れや注意点があります。
サービス内容や支給量を変更したい場合(変更申請)
お子さんの成長や環境の変化に伴い、現在のサービス内容や支給量ではニーズに合わなくなってくることがあります。そのような場合に検討するのが変更申請です。
変更申請が必要になる主なケース
- お子さんの心身の状態が変化し、より手厚い支援や異なる種類のサービスが必要になった。
- 学校生活や放課後の過ごし方が変わり、サービスの利用時間や回数を調整したい。
- 利用している事業所が合わなかったり、引っ越しなどで事業所を変更する必要が生じた。
- レスパイトケア(親の休息)の必要性が高まり、短期入所の利用を増やしたい。
変更申請の流れ
変更申請は、基本的には最初にサービスを利用開始する際の流れに沿って進められますが、いくつかのステップが省略されたり、見直しの要素が加わったりします。
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相談支援専門員への相談:
- まず、担当の相談支援専門員に、サービス内容や支給量の変更を希望する理由やお子さんの現在の状況を相談します。
- 相談支援専門員が、変更の必要性や新たなニーズを把握し、今後の手続きについてアドバイスをくれます。
- ポイント: なぜ変更が必要なのか、お子さんが現在どのような状況で、どのような支援があれば困りごとが解決されるのかを具体的に伝えることが重要です。
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市町村への変更申請:
- 市町村の障害福祉担当窓口に「支給量変更申請書」などの書類を提出します。申請書類の様式は市町村によって異なりますので、事前に確認するか、相談支援専門員に教えてもらいましょう。
- 申請の際に、お子さんの状況変化を説明する書類(医師の意見書や、現在の利用状況、困りごとなどをまとめたもの)の提出を求められる場合があります。
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聞き取り調査(必要に応じて):
- 申請内容によっては、市町村の担当者や相談支援専門員による聞き取り調査が行われることがあります。お子さんの現在の状況や、希望する変更内容について詳しく話を聞かれます。
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サービス等利用計画の変更:
- 変更申請が認められる方向で進む場合、現在のサービス等利用計画を見直す必要があります。
- 相談支援専門員が、お子さんの新しいニーズに基づき、変更後のサービス内容や支給量を盛り込んだ「サービス等利用計画案」を作成します。
- 親御さんは、この計画案が希望する支援内容と合っているか確認し、同意します。
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支給決定の変更:
- 市町村が、提出されたサービス等利用計画案や聞き取り調査の結果などを踏まえて、変更後の支給量やサービス内容を決定します。
- 「支給決定通知書」や「受給者証」などが改めて発行されます。
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事業所との契約変更:
- 新しい支給決定通知書に基づき、利用する事業所と改めて契約を結び直します。利用時間や回数などが変更されます。
手続きのポイント
- 早めの相談: 変更したいと感じたら、早めに相談支援専門員や市町村に相談することが大切です。手続きには時間がかかる場合があります。
- 状況を具体的に: お子さんの具体的な状況や困りごと、なぜ変更が必要なのかを明確に伝えられるように整理しておきましょう。
- 書類の準備: 市町村から求められる書類を漏れなく準備します。診断書や意見書が必要な場合は、かかりつけ医に相談しましょう。
有効期間が満了する場合(更新申請)
障害福祉サービスの支給決定には、通常1年程度の有効期間が定められています。有効期間が満了した後も引き続きサービスを利用したい場合は、更新手続きが必要です。
更新手続きの流れ
更新手続きは、最初にサービスを利用する際の申請プロセスと非常に似ています。
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市町村からの通知:
- 有効期間が満了する1〜3ヶ月前頃に、市町村から更新手続きに関する通知が届きます。通知が届いたら、すぐに手続きを開始しましょう。
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市町村への更新申請:
- 市町村の障害福祉担当窓口に「支給決定更新申請書」などを提出します。
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障害支援区分の認定調査(必要な場合):
- 多くの場合、更新申請に伴い、障害支援区分の認定調査が再度行われます。市町村の調査員が自宅などを訪問し、お子さんの心身の状態や生活状況について聞き取りを行います。
- この調査結果に基づいて、新しい障害支援区分が認定されます。区分によっては支給量の上限などが変わる可能性があります。
- ポイント: 調査の際は、日頃のお子さんの様子、できること・できないこと、介助が必要なことなどを具体的に伝えましょう。特に、介助の必要性や困りごとについては、普段の状況を正直に伝えることが重要です。
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サービス等利用計画の見直し:
- 新しい障害支援区分が認定されたら、担当の相談支援専門員が、お子さんの現在のニーズや認定区分に基づいて、新しい「サービス等利用計画案」を作成します。
- 親御さんは、計画案の内容を確認し、同意します。
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支給決定の更新:
- 市町村が、新しい障害支援区分やサービス等利用計画案などを踏まえて、更新後の支給量やサービス内容を決定します。
- 新しい「支給決定通知書」や「受給者証」などが発行されます。
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事業所との契約更新:
- 新しい支給決定通知書に基づき、利用している事業所と契約を更新します。
手続きのポイント
- 通知を見落とさない: 更新通知が届いたら、必ず期日までに手続きを行いましょう。手続きを忘れると、サービスが一時的に利用できなくなる可能性があります。
- 調査への準備: 認定調査がある場合は、日頃のお子さんの様子が伝わるように、事前に伝えたい内容を整理しておくとスムーズです。
- 計画案の確認: 作成されたサービス等利用計画案が、お子さんにとって適切か、希望する支援内容が盛り込まれているか、しっかりと確認しましょう。
手続きをスムーズに進めるためのポイント
変更申請や更新申請を円滑に進めるためには、日頃からの準備と関係機関との連携が大切です。
- 相談支援専門員との連携: サービス利用開始後も、お子さんの状況の変化や困りごとがあれば、こまめに相談支援専門員に伝えておきましょう。日頃からの情報共有が、スムーズな計画見直しや変更申請につながります。
- お子さんの記録: 普段のお子さんの様子、できるようになったこと、新しく出てきた課題や困りごとなどを記録しておくと、変更申請や更新申請の際に状況を説明しやすくなります。
- 手続き時期の把握: 支給決定の有効期間や、次に手続きが必要になる時期を把握しておきましょう。受給者証などで確認できます。
- 不明点は確認: 申請書類の書き方や手続きの流れで不明な点があれば、遠慮なく市町村の障害福祉担当窓口や相談支援専門員に質問しましょう。
相談窓口
手続きに関して困ったときや、どこに相談すれば良いか分からないときは、以下の窓口に相談できます。
- お住まいの市町村の障害福祉担当課: 制度全般や手続きに関する基本的な情報を提供してくれます。
- 担当の相談支援事業所: サービス等利用計画の作成や変更、サービス利用に関する相談に乗ってくれます。
- 都道府県の窓口: 広域的な制度や、市町村の対応に疑問がある場合に相談できることがあります。
ご自身の状況に合わせて、適切な窓口にご相談ください。
まとめ
障害のあるお子さんの障害福祉サービスは、一度支給決定を受けたら終わりではなく、お子さんの成長や状況に合わせて見直しや更新が必要になります。変更手続きや更新手続きは、最初の申請と同様に時間と手間がかかることもありますが、これらは、お子さんにとってその時々に最も必要な支援を受け続けるために欠かせないプロセスです。
手続きの流れやポイントを知っておくことで、漠然とした不安が軽減され、計画的に準備を進めることができるはずです。もし分からないことや困ったことがあれば、一人で抱え込まず、市町村の担当者や相談支援専門員に遠慮なく相談してください。
この情報が、親御さんがお子さんの必要な支援を継続していく一助となれば幸いです。