障害のあるお子さんの障害支援区分・サービス等利用計画 決定に際し不服がある場合の対応
障害のあるお子さんの障害支援区分・サービス等利用計画 決定に際し不服がある場合の対応
お子さんが障害福祉サービスを利用するためには、「障害支援区分」の認定や「サービス等利用計画」の作成といった手続きが必要です。しかし、市町村から通知された障害支援区分や、作成・合意したサービス等利用計画の内容が、お子さんの実際の状況や必要な支援と合わないと感じる場合もあるかもしれません。
多くの情報を集め、大変な手続きを経てたどり着いた結果が期待と異なるとき、戸惑いや不安を感じるのは自然なことです。しかし、そのような場合にも、その決定内容について市町村に相談したり、適切な手続きを経て見直しを求めたりすることが可能です。
この記事では、障害のあるお子さんの障害支援区分やサービス等利用計画の決定内容について、もし不服や疑問がある場合に親御さんがどのような対応をとることができるのか、具体的な手続きや相談先を含めて分かりやすくご説明します。
不服申し立て(審査請求)とは?
障害支援区分やサービス等利用計画など、市町村が行う障害福祉サービスに関する行政の決定(処分といいます)に納得がいかない場合、その決定の見直しを求める手続きとして「不服申し立て」、正確には「審査請求(しんさせいきゅう)」という制度があります。
この制度は、行政機関が行った処分が、法令に基づいて適正に行われているかを行政機関自身やその上位の機関が審査し、国民の権利利益を救済することを目的としています。
ただし、必ずしも審査請求に進む前に、まずは市町村の担当窓口に相談し、疑問点や不満な点を伝えることから始めるのが一般的です。話し合いによって解決するケースも少なくありません。
不服申し立て(審査請求)の対象となる決定
主に以下のような市町村による決定(処分)が審査請求の対象となり得ます。
- 障害支援区分の認定
- 認定された区分がお子さんの実際の状況よりも低く、必要なサービス量が確保できないと感じる場合など。
- 障害福祉サービスの種類や支給量の決定
- 申請したサービスが認められなかった場合や、認められた支給量が希望する量に満たない場合など。
- サービス等利用計画案の内容の同意
- 相談支援事業所が作成し、市町村が内容を確認・決定した計画案について、お子さんの状況や必要な支援とのずれを感じる場合など。
これらの決定に関する不服は、原則として決定があったことを知った日の翌日から3ヶ月以内に、都道府県知事に対して審査請求を行うことができます。ただし、決定があったことを知らなかった場合は、決定の日から1年以内という期限もあります。
不服申し立て(審査請求)の手続きの流れ
不服申し立て(審査請求)の具体的な流れは以下のようになります。
- 市町村への事前相談
- まずは、決定を行った市町村の障害福祉担当課に連絡し、決定内容について説明を求め、疑問点や不満な点を伝えてみましょう。
- この段階で、判断の根拠や経過について詳細な説明を受けることで、誤解が解消されたり、別の解決策が見つかったりすることがあります。
- 例えば、サービス等利用計画の内容に不満がある場合は、相談支援事業所や市町村と再度話し合い、計画案の見直しを依頼することも考えられます。
- 審査請求書の提出
- 市町村との話し合いでも解決に至らない場合や、そもそも話し合いが難しいと感じる場合は、都道府県知事に対し審査請求書を提出します。
- 審査請求書には、決定があったこと、決定を知った日、審査請求の趣旨(なぜその決定に不服なのか)、審査請求の理由などを記載します。
- 審査請求書の書式は、各都道府県のウェブサイトなどで公開されている場合があります。
- 提出先は、都道府県の障害福祉担当課や、行政不服審査制度を担当する部署になります。
- 審理手続き
- 審査請求書が提出されると、都道府県は審理員を指名し、審理手続きが進められます。
- 審理員は、提出された審査請求書や市町村からの資料などを確認し、必要に応じて審査請求人(親御さん)や市町村からの意見聴取や資料提出を求めます。
- 親御さんは、自分の主張を裏付ける証拠(医師の診断書、お子さんの様子の記録など)を提出することができます。
- 裁決
- 審理手続きが終了すると、審理員の意見を踏まえ、都道府県の審査会等(専門家で構成される第三者機関)の議を経て、都道府県知事が「裁決(さいけつ)」を行います。
- 裁決には、元の市町村の決定を取り消す、または変更するといった内容や、請求を退けるといった内容があります。
- 裁決は、審査請求人に書面で通知されます。
不服申し立て以外の対応策
審査請求は正式な行政手続きであり、時間と労力がかかる場合があります。審査請求に進む前に、または審査請求と並行して、以下のような対応も検討できます。
- 市町村の担当課への再度の相談・説明求め:
- 決定の根拠や、どのような情報に基づいて判断されたのかを改めて詳しく聞くことで、納得できる場合や、次に取るべき行動が見えてくることがあります。
- 相談支援事業所との再協議:
- サービス等利用計画の内容に関する不満であれば、計画を作成した相談支援事業所と改めて話し合い、計画案の見直しを依頼します。お子さんの状況の変化や、見落とされている点などを具体的に伝えましょう。
- 意見書の提出:
- 障害支援区分の認定調査や医師意見書の内容に誤りがあると思われる場合は、市町村にその旨を伝え、意見書を提出することも有効です。
- 専門家への相談:
- 行政手続きに詳しい弁護士や行政書士に相談することも一つの方法です。特に、不服申し立ての手続きに不安がある場合に、書類作成や手続きに関するアドバイスを得られます。
手続き中のサービス利用について
審査請求を行っても、原則として元の市町村の決定の効力は停止しません。つまり、審査請求の結果が出るまでの間は、認定された障害支援区分や決定されたサービス内容・量に基づいてサービスを利用することになります。
ただし、審査請求が認められ、決定が取り消されたり変更されたりした場合は、その裁決に基づいて改めてサービス内容や量が決まります。
相談窓口
決定内容に不服や疑問がある場合、まずは以下の窓口に相談することをおすすめします。
- 市町村の障害福祉担当課:
- 決定内容に関する説明を求める最初の窓口です。
- 相談支援事業所:
- サービス等利用計画の内容や、必要なサービスに関する相談ができます。市町村への意見具申を依頼することも可能です。
- 都道府県の障害福祉担当課:
- 審査請求に関する手続きの案内や、制度に関する一般的な相談ができます。
- 都道府県の行政不服審査制度担当課:
- 審査請求書の提出先であり、手続きの詳細について確認できます。
- 弁護士会、行政書士会:
- 行政手続きや法律に関する専門的なアドバイスを求める場合に利用できます。
まとめ
障害のあるお子さんの障害支援区分やサービス等利用計画の決定は、お子さんの将来の生活や必要な支援に大きく関わる重要なものです。もし、その決定内容に疑問や不満を感じたとしても、諦める必要はありません。
まずは市町村の担当窓口に相談し、丁寧な説明を求めることから始めてみましょう。話し合いで解決しない場合や、決定自体に不服がある場合は、審査請求という正式な手続きを検討することができます。
これらの手続きは複雑に感じられるかもしれませんが、お子さんにとってより適切な支援を確保するために、必要な情報を集め、一歩ずつ進んでいくことが大切です。ご自身の状況に合わせて、利用できる相談窓口なども活用しながら対応を進めていただければ幸いです。