お子さんの障害福祉サービス利用の基礎知識 障害者総合支援法とは?全体像と活かし方
はじめに
障害のあるお子さんを育てられている親御さんにとって、受けられる支援制度やサービスについて調べることは、お子さんの成長や将来のために大変重要なことと存じます。しかし、制度は多岐にわたり、どこから情報を得て、何から始めれば良いのか、情報過多の中で混乱されることも少なくないかもしれません。
この「私の権利を知ろう」サイトでは、お子さんとご家族が必要とする権利や支援制度について、分かりやすく正確な情報をお届けすることを目指しております。
今回は、数ある障害福祉サービスの根幹となる法律である「障害者総合支援法」に焦点を当て、その全体像と基本的な仕組みを解説いたします。この法律を理解することが、お子さんの状況に応じたサービスを見つけ、利用へと繋げていくための一歩となることでしょう。
障害者総合支援法とは? 制度の目的と基本的な考え方
障害者総合支援法(正式名称:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)は、障害のある方が地域社会で自立した生活を送れるよう、様々な支援を総合的に行うための法律です。
この法律の主な目的は、障害のある方が、個々の状況に応じて必要なサービスを選択し、地域で安心して暮らせるように支援することにあります。
基本的な考え方として、以下の点が挙げられます。
- 障害のある方の自己決定の尊重: どのようなサービスを利用するかは、ご本人の意向を尊重して決定されます。
- 地域社会での共生: 施設だけでなく、住み慣れた地域で安心して生活できるよう支援します。
- サービス利用の契約: サービス提供事業者との間で、利用契約を結ぶという考え方が基本にあります。
障害者総合支援法に基づくサービスの全体像
障害者総合支援法に基づく支援は、大きく分けて二つの柱があります。
- 自立支援給付
- 地域生活支援事業
これらは、障害のある方の「自立した生活」や「地域での暮らし」を支えるために提供されます。
1. 自立支援給付
国が一律の基準を定めて提供されるサービスで、全国どこでも基本的に同じサービスが受けられます。主に以下の6つの種類があります。
- 介護給付: 日常生活や身体介護に関するサービス(例:居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、療養介護、生活介護、短期入所、重度障害者等包括支援、施設入所支援)
- 訓練等給付: 自立した生活や就労に向けた訓練、住居の提供など(例:自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援(A型・B型)、共同生活援助(グループホーム))
- 地域相談支援給付: 地域移行・地域定着のための相談や支援(例:地域移行支援、地域定着支援)
- 計画相談支援給付: サービス利用計画の作成や見直しなど、サービス利用をサポートする相談支援(例:計画相談支援)
- 自立支援医療: 心身の障害に対する医療費の自己負担分を軽減する制度(例:育成医療、更生医療、精神通院医療)
- 補装具: 身体機能を補うための用具の購入・修理費用の支給(例:義肢、装具、車椅子、歩行器、補聴器など)
障害のあるお子さんの場合、「介護給付」の中の短期入所や生活介護、「訓練等給付」の中の共同生活援助などが将来的な選択肢として考えられます。また、障害の程度に応じて利用できるサービスの種類が異なります。
2. 地域生活支援事業
市町村が主体となって、地域の特性に応じて柔軟に実施する事業です。自立支援給付を補完し、障害のある方の地域での暮らしを支える多様なサービスが含まれます。主な事業としては以下のようなものがあります。
- 相談支援
- コミュニケーション支援(手話通訳、要約筆記など)
- 日常生活上の支援(日中一時支援、移動支援など)
- 理解促進、普及啓発
- その他、市町村が定める事業
地域生活支援事業は、お住まいの市町村によって実施している事業内容や利用条件が異なる場合があります。例えば、放課後等デイサービス(児童発達支援も含む)は、児童福祉法に基づくサービスですが、申請手続きなど障害者総合支援法と共通する部分も多くあります。
サービス利用までの基本的な流れ
障害者総合支援法に基づくサービスを利用するためには、原則としてお住まいの市区町村の窓口に申請を行います。全体の基本的な流れは以下のステップで進みます。
- 相談: まずは市区町村の障害福祉担当窓口や、相談支援事業所に相談します。どのようなサービスがあるか、お子さんの状況に合うものは何かといった情報を得ます。
- 申請: 市区町村の窓口に、サービスの利用申請書を提出します。この際に、医師の診断書や意見書などが必要となる場合があります。
- 聞き取り調査: 市区町村の職員などが訪問や面談を通じて、お子さんの心身の状況、生活の様子、希望するサービスなどについて聞き取りを行います。
- 障害支援区分の認定(原則として18歳以上の場合): 心身の状態やサービス利用の必要度を示す「障害支援区分」の認定が行われます。障害支援区分は、サービスの種類や量を決定する際の目安の一つとなります。お子さんが18歳未満の場合は、障害支援区分の認定は原則として不要です。
- サービス等利用計画案の作成依頼: 利用申請後、市区町村から「サービス等利用計画案」の作成を依頼されます。これは、どのようなサービスを、どのように利用したいかといった計画を立てるもので、指定特定相談支援事業者などに作成を依頼するのが一般的です。ご自身やご家族で作成することも可能です(セルフプラン)。
- サービス等利用計画案の提出と支給決定: 作成されたサービス等利用計画案を市区町村に提出し、内容が検討された上で、利用するサービスの種類や量(日数や時間など)が決定されます。
- 受給者証の交付: サービスの支給決定後、「障害福祉サービス受給者証」が交付されます。この受給者証が、サービスを利用するために必要となります。
- サービス事業者との契約・利用開始: 受給者証に記載された内容に基づき、サービスを提供する事業者を選択し、利用契約を結びます。その後、サービスの利用を開始します。
この流れの中で、「相談支援事業所」は、サービス利用の相談からサービス等利用計画の作成、サービス利用後のフォローアップまで、一貫してお子さんとご家族をサポートしてくれる重要な存在です。
利用者が費用負担する仕組み
障害福祉サービスを利用した場合の費用は、原則としてサービスにかかった費用の1割を利用者が負担することになっています。ただし、所得に応じて1ヶ月あたりの負担額に上限が定められており、これを「負担上限月額」といいます。
この負担上限月額は、世帯の収入状況などによっていくつかの区分に分かれています。たとえば、生活保護を受けている世帯や低所得の世帯は負担上限月額が低く設定されており、経済的な状況にかかわらず必要なサービスを受けられるよう配慮されています。
障害者総合支援法について、どこに相談すれば良いか
障害者総合支援法に基づくサービスについて詳しく知りたい、利用を検討したいという場合は、以下の窓口に相談することができます。
- お住まいの市区町村 障害福祉担当窓口: 制度全般に関する情報提供や、申請手続きの受付を行います。
- 相談支援事業所: サービス利用に関する具体的な相談、サービス等利用計画の作成支援などを行います。特に「基幹相談支援センター」は、地域の相談支援の中核的な役割を担っています。
- 発達障害者支援センター: 発達障害に関する専門的な相談支援を行います。
- その他: 障害の種類や年齢に応じて、障害者就業・生活支援センター、地域活動支援センターなど、様々な相談窓口があります。
まずは、お住まいの市区町村の窓口に連絡を取り、最初の一歩を踏み出すことをお勧めいたします。
まとめ
障害者総合支援法は、障害のあるお子さんが、その成長段階や個々の状況に応じて、地域社会の中で安心して生活し、可能性を広げていくための様々な支援を提供する、大変重要な法律です。
制度の全体像を把握することは、お子さんの将来のライフプランを考える上でも役立ちます。制度は複雑に感じられるかもしれませんが、焦らず、一つずつ情報を整理し、分からないことは専門機関に相談しながら進めていくことが大切です。
この記事が、お子さんのための福祉サービス利用について考え始めるきっかけとなり、必要な情報にたどり着くための一助となれば幸いです。
参考情報: * 厚生労働省 障害者総合支援法の概要 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaisha/shougaishasougoushien.html * (お住まいの市区町村名) 障害福祉サービス (※読者がお住まいの自治体ホームページを参照することを推奨します)
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況に応じた専門的な判断や手続きについては、必ずお住まいの市区町村の窓口や専門機関にご相談ください。