【特性別】うちの子に役立つかも?支援制度の見つけ方・全体像
はじめに
障害のあるお子さんを育てていらっしゃる親御さんにとって、利用できる支援制度に関する情報は非常に多岐にわたり、どこから手をつけて良いか混乱してしまうこともあるかと存じます。特に、お子さんの障害特性によって関係する制度が異なるため、「うちの子にはどんな制度が役立つのだろう?」とお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
この情報過多な状況の中で、ご自身の時間も限られている中、お子さんにとって必要な情報を効率的に見つけたいとお考えのことでしょう。
この記事では、障害特性別にどのような支援制度が関係してくるのか、その全体像と、ご自身のお子さんに合った情報を見つけるためのステップを分かりやすくご説明します。すべてを一度に把握する必要はありません。まずは全体を眺め、次にどう進めば良いかのヒントとしてご活用いただければ幸いです。
障害特性と支援制度の関係を知る
お子さんが受けられる可能性のある支援制度は、診断名や障害の状態、お住まいの地域、年齢など、さまざまな要素によって異なります。
特に重要なのは、「医学的な診断名」と「福祉制度上の対象区分」は必ずしも一致しないということです。例えば、医学的に「発達障害」と診断されていても、福祉サービスを利用するためには「障害支援区分」の認定や、「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」の取得などが関係してくることがあります。
このため、「うちの子は○○だから、この制度しかない」と限定せず、お子さんの具体的な困りごとや必要としているサポートの内容から、どのような制度が考えられるかを探っていく視点が大切になります。
以下では、一般的な障害特性と関連性の高い支援制度の概要をご紹介します。これはあくまでも一例であり、お子さんの状況によって必要な支援は異なりますので、ご参考としてご覧ください。
主な障害特性と関連性の高い支援制度(概要)
ここでは、いくつかの主要な障害特性を例に、関連性の高い制度を概観します。
知的障害・発達障害
- 関連性の高い制度:
- 障害児通所支援: 児童発達支援(未就学児)、放課後等デイサービス(就学児)など。集団での関わり方や学習、日常生活スキルの向上などを目的とした通所サービスです。
- 療育手帳: 取得することで、特別児童扶養手当や障害年金(20歳前)、税制上の優遇、公共料金の割引など、様々なサービスや支援の対象となる場合があります。
- 特別児童扶養手当: 20歳未満で精神または身体に一定以上の障害のあるお子さんを育てている保護者の方に支給される手当です。
- 障害年金(20歳前の障害基礎年金): 20歳前に障害の状態となり、国民年金に加入した後に一定の障害の状態にある場合に支給される年金です。
- 障害者総合支援法に基づくサービス: 居宅介護、短期入所、行動援護(重度の知的障害や精神障害により行動上の困難がある方)など、様々なサービスがあります。これらは障害支援区分の認定等が必要となる場合があります。
- 特別支援教育: 小学校、中学校、高等学校等における特別な教育的支援。通級指導教室や特別支援学級、特別支援学校などがあります。
- 就労移行支援事業所、就労継続支援事業所: 卒業後の就労に向けた訓練や、働く場を提供するサービスです。
肢体不自由・重度心身障害
- 関連性の高い制度:
- 身体障害者手帳: 取得することで、様々な福祉サービスや支援の対象となる場合があります。
- 重度心身障害者医療費助成制度: 重度の障害のある方を対象に、医療費の自己負担分の一部または全部を助成する制度です(自治体によって名称や内容は異なります)。
- 障害者総合支援法に基づくサービス:
- 居宅介護(ホームヘルプ): ご家庭での入浴、排泄、食事などの介護や、調理、洗濯、掃除などの家事援助を提供するサービスです。
- 重度訪問介護: 重度の肢体不自由などで、常に介護が必要な方に、長時間の身体介護や家事援助などを提供するサービスです。
- 短期入所(ショートステイ): 介護者が病気の場合などに、短期間施設に入所して介護を受けるサービスです。レスパイトケア(介護負担軽減)を目的として利用されることも多いです。
- 重度障害者等包括支援: 障害支援区分が特に高い方を対象に、複数のサービスを包括的に提供するサービスです。
- 補装具費支給制度: 身体の欠損や機能障害を補うための用具(車いす、義肢、装具など)の購入や修理にかかる費用の一部または全部を助成する制度です。
- 日常生活用具給付等事業: 自立した生活を支援するための用具(特殊寝台、入浴補助用具など)の購入やレンタルにかかる費用の一部または全部を助成する制度です。
- 小児慢性特定疾病医療費助成制度: 国が定める小児慢性特定疾病にかかっているお子さんの医療費の一部または全部を助成する制度です。
- 特別児童扶養手当、障害年金(20歳前): 上記「知的障害・発達障害」と同様に対象となる場合があります。
視覚障害・聴覚障害
- 関連性の高い制度:
- 身体障害者手帳: 取得することで、様々な福祉サービスや支援の対象となる場合があります。
- 日常生活用具給付等事業: 点字器、音声・拡大読書器、補聴器、人工内耳の外部装置など、コミュニケーションや情報収集を支援する用具の費用助成が行われる場合があります。
- 障害者総合支援法に基づくサービス:
- 同行援護(視覚障害者対象): 移動に著しい困難を有する視覚障害のある方に、移動に必要な情報の提供や代筆・代読などの外出支援を行うサービスです。
- 行動援護(知的障害等も伴う場合): 重度の知的障害や精神障害などにより行動上の困難がある方に、危険回避のための援護や外出支援を行うサービスです。
- 意思疎通支援事業(市町村の地域生活支援事業): 手話通訳者や要約筆記者を派遣するサービスなどがあります。
- 特別支援教育: 視覚障害や聴覚障害のあるお子さんに対する教育。特別支援学校や特別支援学級などがあります。
精神障害(児童期に関連するものの一部)
- 関連性の高い制度:
- 自立支援医療(精神通院医療): 精神疾患の治療のために通院している方の医療費の自己負担額を軽減する制度です。てんかんや、一部の発達障害に伴う二次的な精神症状なども含まれる場合があります。
- 精神障害者保健福祉手帳: 精神疾患により長期にわたり日常生活または社会生活への制約がある方に交付される手帳です(成人期以降に取得されることが多いですが、18歳以上であれば取得可能です)。
- 障害年金(20歳前の障害基礎年金): 上記「知的障害・発達障害」と同様に対象となる場合があります。
- 障害者総合支援法に基づくサービス: 居宅介護、同行援護、行動援護、自立訓練、就労移行支援など、様々なサービスがあります。障害支援区分の認定などが必要となる場合があります。
「うちの子に合う支援制度」を見つけるためのステップ
このように、障害特性によって関係する制度は多岐にわたります。情報が多すぎて、どこから調べれば良いか迷うこともあるでしょう。お子さんに必要な支援制度を見つけるためには、以下のステップで進めていくことをお勧めします。
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まずはお住まいの市町村の相談窓口に相談する
- 市町村の障害福祉課や社会福祉協議会などが主な相談先です。お子さんの年齢や状況、困りごとなどを伝えると、利用できる可能性のある制度や次に取るべき手続きについて教えてもらえます。
- 「相談支援事業所」も、福祉サービスの利用計画作成や情報収集のサポートをしてくれる専門機関です。どこに相談すれば良いか分からない場合も、まずは市町村に問い合わせて相談支援事業所を紹介してもらうと良いでしょう。
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お子さんの状況に応じた「手帳」や「区分」の申請を検討する
- 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳や、障害者総合支援法に基づく障害支援区分などは、多くの福祉サービスを利用するための入り口となるものです。必ずしも取得が必須というわけではありませんが、取得することで利用できる制度の選択肢が広がる可能性があります。
- 申請を検討する際は、市町村の窓口や相談支援事業所に相談しながら進めるのがスムーズです。
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「サービス等利用計画」の作成を通じて具体的な支援を検討する
- 障害者総合支援法や児童福祉法に基づくサービス(障害児通所支援など)を利用する際には、「サービス等利用計画案」を作成し、市町村に提出する必要があります。これは、お子さんの生活全体を見渡し、どのようなサービスをどのように利用するかという「設計図」のようなものです。
- 計画作成は、相談支援事業所の「相談支援専門員」に依頼することができます。お子さんの状況やご家族の希望を伝え、一緒に計画を立てていく過程で、必要な支援や利用できる制度がより明確になっていきます。親御さん自身で作成することも可能ですが、専門家の視点から様々な選択肢を提案してもらえるメリットがあります。
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関係機関と連携する
- お子さんの支援に関わる関係機関(学校、医療機関、相談支援事業所、サービス提供事業所など)と情報を共有し、連携していくことが重要です。お子さんの状況の変化や、必要とする支援が変わった際にも、スムーズに対応してもらいやすくなります。
関連する情報源・相談窓口
- お住まいの市町村役場(障害福祉課など): 最も身近な相談窓口です。地域の情報にも詳しいです。
- 相談支援事業所: 障害福祉サービスの利用に関する相談や計画作成を専門に行います。
- 各都道府県の障害者リハビリテーションセンター: 身体障害者手帳や補装具に関する相談・判定などを行うことがあります。
- 発達障害者支援センター: 発達障害に関する専門的な相談支援を行います。
- 難病情報センター: 難病に関する医療費助成制度などの情報を提供しています。
まとめ
お子さんにどのような支援制度が役立つかを知ることは、より安心した日常生活を送るため、そして将来を見通すためにとても重要です。しかし、制度は多岐にわたり、その情報収集は容易ではありません。
まずは、お子さんの障害特性や現在の困りごとから、どのような支援があり得るのか、この記事でご紹介したような全体像を掴んでみてください。そして、一人で抱え込まず、市町村の窓口や相談支援事業所といった専門機関に相談することをお勧めします。
焦る必要はありません。一歩ずつ、お子さんの成長や変化に合わせて必要な情報を集め、利用できる制度を検討していきましょう。この記事が、その最初の一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。